ひーらぐ日記

自然をこよなく愛する写真家?趣味や興味や楽しかったことだけ書く。

考察しながら読む少女終末旅行「09写真/10寺院/11住居」

ここから2巻になる。2巻の巻末には、これまでの道のりの図があり、都市の概念が分かるようになっている。

おじいさんの家を戦火に追われて出発→冬の廃管置き場を西へ→坂→連絡塔を上へ→それなりの期間→暗くて巨大排気ファンのある都市基盤殻層→地上(屋上)部→武器の墓場→第七十二地上発電所→倉庫→巨大排水施設→地上都市→連絡塔→地上(屋上)部となっている。

連絡塔を昇降機で登ったとき、基盤はスルーしたようだ。基盤の中には自律機械による独自の生態系が成立しているのだが、それを知るのは後々になる。

扉絵には、プリントされた写真が並んでいる。よく見ると、飛行機とイシイが写っている写真がある。この扉絵がまた不思議だ。カメラは原子力潜水艦でエリンギに食べられてしまうのだが、イシイ登場から潜水艦まで、二人がカメラのデータをプリントした記述はない。二人の荷物にも出てこない。

扉絵が単なるイメージなのかもしれない。

が、ここは想像力を働かせて、原子力潜水艦からのデータを取り出した誰かが、同型のカメラを用意して画像をプリントしたのだと推測してみよう。むしろ誰かとは、本人たちではないかとも思うのだが。

このカメラは不思議な機械だ。ファインダー内の日付は西暦3230年08月06日13時09分だ。夏なのだ。排水施設が春の雪解けとすると、それから六ヶ月ほど経過しているようだ。レーションは半年分もあったらしい。あと一ヶ月分しかないようだが。漢字が進化したような文字で月島精機と書かれている。レンズはボディ内に収納でき、撮影可能数は52万枚、電池は無限、古代文明の遺品であるらしい。一方で、焦点や露出はマニュアルである。オートにできるのを知らないのか、趣味性が高い製品なのかは不明。L-700という型番やISO、シャッタースピードの表示は古代文字である。

このカメラは、古代文明の技術で作られながら、第二次文明の特徴も見られる。可能性として、古代文明によって作られたカメラを修理もしくは改造して利用していたのではないか。であればピントが手動なのも納得できる。

もうひとつの可能性を考えてみる。月島精機は、どこにある会社なのだろう。名前から単純に推測すると、月の人工島に所在しているのだろうか。その場合、極めて高度な技術によってつくられた趣味性の高い製品ということになる。

それにしても、第二次文明はどこから来たというのだろう。古代文明が作った基盤や連絡塔と、第二次文明の乱雑な地上部を比べれば、前者の方が発達していたのは明らかである。

この回はじめて、謎の石像が出てくる。文明のエネルギーを停止させ地球を眠らせるエリンギを模したもののようだ。この先、寺院や墓場でも出てくる。アニメでは01星空で、縄で縛られた石像が出てくる。何故文明を終わらせるものが崇拝されていたのか、その後迫害されるようになったのかは不明だ。

アニメではたびたびカメラの日付が出てくるので、時間経過を知るのに役立つ。

 

二人は寺院の中へ入っていく。石板には建立2828年と書いてある。今からおよそ400年前に建つというのは、これを見て言ったようだ。とすると、二人は現在の西暦を知っているようだ。

 

せかいがほろびゆく、しかし、おそれるひつようはない

?ろびはつねにわたしたちとともにある

すべてえはみぎからひだりつとながれていくなかで

しうきようこそゆいいつのしゆうてやくてえんでありすくいでもある

3にんのかみはひとびとあんじゆうの?

ちへみちびきせかいをあかるくてらすだ

 

石像のうち2体はエリンギの仲間であることに疑いはないだろう。中央の像は連絡塔の管理AIに似ていなくもない。回りの飾りは、AIの頭の上に表示されるステータスに似ている。

彼らが神として祀られている理由はなんだろう。かつて実際に人々を救ったことがあるのではないだろうか。

古代文明が滅びるとき、何かが人類を救って地球を脱出したはずだ。でなければ、地球が眠りについたときに人類が存続できない。であれば、救ったのはAIとエリンギである可能性が高い。

AIは機械と人間の仲裁をするのが役目と言っていた。エリンギが進化した機械とすれば、筋が通る。人々を安住の地に導くというのは、本当のことだったのではないだろうか。

ただし、時代は下りAIとの接触が断たれると、かつての言い伝えが宗教化されて歪曲されているのではないか。

 

次の住居では、これまでに比べて大規模で整然とした団地が出てくる。これらは終末以前に作られたものらしい。インフラが一部生きており、最近まで人が住んでいたようだ。

パイプにはみずと書いてある。

ベットにはフカフカと書いてある。

食料棚の箱には美味しい食べ物と書いてある。

ほとんどの部屋にドアや窓がない。家具もない。そして死体もないし戦火の跡もない。戦争で人が滅んだだけにしては不自然なところだ。海面上昇によって都市が水没したのではないかと思う。

 

次の扉絵は、夢の中ではあるものの、水没した都市の上にいる二人だ。

二人が寝ている場所は、基礎が長い鉄骨でできた高床式住居で、ここからも過去の水位上昇を感じる。

ユーリが魚になった夢の中も、送電線の鉄柱があり、水没した都市のようだ。

二巻になって、何事もなく旅が続いていきつつ、このようなヒントが毎回提示される展開になっている。

 

雨音では、二人が雨宿りする場所は、古代文明崩壊時に使用された多脚戦車である。ここで始めて、古代兵器が登場する。

古代戦争が二人が知っている武器をはるかに超えるテクノロジーで作られた武器で行われたことの暗示である。

しかしこの戦車はいつの時代のものか不明である。文字は古代文字に近いが、すこし変化した形跡がある。

この先に出てくる巨大人型兵器は、これと同時代のもののように見える。また自律機械も似たようなデザインだ。

一方でこの先に出てくる原子力潜水艦やロケットは、西暦2000年前後とデザインが変わらない古風なものだ。不思議である。