会話録872832
「今日は親しさについて語ろう。
「人と人との親密度についてですね。
「そうだ。昔の人の言葉にこんなのがある。君子の交わりは淡きこと水の如し、小人の交わりは甘きこと酒の如し。
「それは君子より小人の方が、他人と親密になれるということですか?
「そうかもしれないし、そうでないとも言える
「と、言いますと?
「私の意見としてはこうだ。心には闇と光が、もしあるのならばだが、闇を共有するのが小人の交わりで、光を共有するのが君子の交わりだ。
「つまり人間の正の感情を共有するか、負の感情を共有するかということですね
「なるほど、その方が分かりやすいな。親密度をあげるには感情の共有が必要だ。ところが負の感情の共有は、なんというか酒や麻薬のような魅力と副作用があるんだよ。
「中毒性があるのですか?
「善事より悪事を共有するか方が、親密度は容易に高くなる。スリルや快感を伴うからね。しかしそうしてできた友情は壊れるのも早い。
「どうしてです?
「負の感情が共感し続けられればいい。だが、いつも共感できるとは限らないだろう。誰が共感できない憎しみや悲しみ怒り嫉妬など負の感情を見たいと思うかね。うんざりしないか?
「それはもう。
「また意見の衝突が起きたとき、大事になるのはどちらだ?
「確かに、怒りがぶつかれば破局は免れません。
「そう。現実には同じ相手に対して、正の感情の共有も負の感情の共有も両方あるものだ。できれば正の感情共有の方が多くありたい。それは淡くても着実に積み上げられるものだからな。