ひーらぐ日記

自然をこよなく愛する写真家?趣味や興味や楽しかったことだけ書く。

ハクメイとミコチの同人〜銀髪のマステラ

【ミコチと出会う以前のハクメイ】

呑戸屋で博打をするハクメイから、過去はこんな風だったのでないかと妄想してみた。

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【岩貫会にて】

ハ「イワシ、今日は何の仕事なんだ?」

イ「お前、しっぽはやめろって言ってるだろ」

ハ「で?」

イ「なんでも東の大門、直すらしいぞ」

ハ「えぇ?あの身長制限のか?」

イ「ああ。どっかの有名な建築士や人足を大勢呼ぶらしい。今日はその段取りだ」

ハ「は〜」

二人は岩貫会の中に入った。会長とカテンと、もうひとりいる。

銀髪のイタチだ。

ハ「マ、マステラ師匠」

マ「ハクメイか…」

ハクメイは気まずそうに黙った。

イ「ハクメイ、お前知ってるのか?」

ハ「いゃ…その…」

マ「あんたに師匠と呼ばれる筋合いはないよ。あんたは私のところから逃げたんだからね」

イ「はぁ?」

ハ「う…」

ナ「イワシ、話は聞いてるかもしれんが、半年後に東の大門の大修理が始まる。石で組んだアーチを、一度バラして傷んだ石は新しいのに変える。大仕事だ」

マ「あら、あなたイタチなのにイワシなの?」

イ「いや、名前が鰯谷なもんで」

マ「いいオトコね」

イ「はあ…」

マ「うちの孫のムコにならない?」

イ「孫!?」

ナ「マステラのとこは30人ほどの大所帯だ。ハクメイ、お前が仕事しやすいように段取りしてやれ」

ハ「わたしが?」

ナ「ああ、頼んだぞ」

ハクメイは街を案内した。

ハ「ここが東の大門だ。確かにだいぶ傷んでるな」

マ「んなこた知ってるよ。何度も見に来たさ」

ハ「いっそ無くしちゃうんじゃだめか?」

マ「あんたこのアーチの由来しらないのかい?」

ハ「え?」

マ「イワシちゃん、足場を組むのにどれぐらいかかる?」

イ「こいつは…アーチだけで丸太2000本は必要っすね。周り囲うとなると5000かな?」

マ「いい読みね。でも今回は4000で十分よ」

イ「足りますかね」

マ「全部いっぺんに直すんじゃなくて、端っこから順に流れるように作業するのよ」

イ「そいつは…」

マ「腕が良くないとできないわよ。期待してるわ。…ハクメイ」

ハ「は、はい」

マ「あんたに足場は組ませないわよ。昔から下準備はいい加減だったからね」

ハ「あ…はい…」

三人は次にキアンの図書館に向かった。

キ「ご希望に添える地区としては、やはりマキナタ北西部のユカタ地区ですね」

ハ「あそこはガレキの山だろ」

キ「でもいい土地は、すでに誰かが住んでますから。あらたに30人も住む街をひとつ作るとなると…」

マ「何が問題なんだい?」

ハ「あそこは古い大きな石造りの建物が崩れた跡なんだ。ガレキの撤去が難しくて手付かずなんだよ」

マ「上等じゃないか。ガレキなんぞは補修の目地にしちまえばいいのさ」

三人はユカタ地区に足を運んだ。

ハ「だけど30人が二ヶ月いるだけなのに、新たに家を作る必要があるのか?」

マ「あぁ、しかも三階建てにする」

ハ「…なんのために?」

マ「一階は工場、二階は倉庫だ。三階は住居だな」

イ「仮小屋みたいのじゃだめなのか?」

マ「それじゃ後で売れないだろう?」

ハ「売るのか!?」

マ「アーチの修理だけじゃたいして儲からないよ。修理費を建築費に当てて売ればだいたい三倍さ。それに新しい街をつくれば、新しい人が集まってくる。人が集まればますます建築の仕事は増えるってわけさ」

ハ「あいかわらず、スケールが大きいな」

マ「次は飯だよ。仕出しにアテはあるかい?」

ハ「ほとんどが魚食だよなぁ。センのところか?」

三人はセンの家に向かった。

セ「すると30人が二ヶ月分の食材を用意すればいいのだね」

ハ「できるか?」

セ「ああ、一日二時間ほど、三人くらい手伝いをくれ。仕掛けと運搬に必要だ」

マ「よろしく頼むよお嬢さん。ところで、あんたのところには面白い道具がいっぱいあるね」

セ「あぁ、研究のために仕入れてる。ハクメイにもだいぶ手伝ってもらってるよ」

マ「ハクメイにイタズラされて壊されてないかい?」

セ「いゃ、そういうことはないが?」

マ「こいつは昔、店の道具を勝手に持ち出しては壊して帰って来たからね」

セ「ハクメイ、君というやつは…」

三人は次に呑戸屋に向かった。シナトとミマリが仕込みをしている。

シ「するとなにか?30人分の朝晩のメシを二ヶ月間作れっていうのか?」

ハ「やっぱり無理か?」

シ「いいや、やるぜ」

ミ「姉さん?」

ハ「助かる」

シ「材料の仕入れはセンとミキに任せていいんだな?ミコチに手伝ってもらうと。なんとかなるだろ」

ミ「姉さん、そんな無理して大丈夫ですか?」

シ「ミマリ、お前だってゆくゆくは自分の店を持ちたいだろ?」

ミ「へ?」

シ「こいつはその軍資金稼ぎだ」

ミ「姉さん…」

シ「まぁその間、酒と賭場は休みだがな…」

マ「ほう、ここは賭場もやってるのかい?ハクメイがイカサマばっかりして、荒らしてるんじゃないかい?この娘は昔から手癖が悪くてね」

ハ「う…」

シ「ほぅ…あとでじっくり聞かせてもらおうか」

ハクメイはミコチと仕出しの打ち合わせをするために家に向かった。イワシマステラは岩貫会に向かった。

 

ミ「あら、もう仕事は終わり?」

ハ「ミコチ、頼みがある」

ミ「ん?」

ハ「東の大門の修理にたくさんの作業員がくる。二ヶ月間呑戸屋の仕出しを手伝ってくれないか?」

ミ「二ヶ月!?まぁ夜だけならなんとかなるけど」

ハ「あと、もうひとつ」

ハクメイはミコチに土下座した。

ハ「すまん。お金を貸してくれ!」

ミ「はぁ?」

ハ「頼む!」

ミ「ハクメイ、友人に金を貸し借りすることの怖さを…」

ハ「知ってる。その上で頼みたい」

ミ「…話して」

 

イワシマステラの道中。

マ「今はあんたがハクメイの師匠なんだね」

イ「まぁ…あいつ昔はいろいろやらかしてたんすね」

マ「ええ、それはもう」

イ「なんだかピンとこないっすね」

マ「わたしもよ。昔はね、ずいぶん荒れてたのよ。周りの人間を誰も信用しなくて、いつもひとりぼっち。何故か私は懐かれててね。小さい頃はよく尻尾につかまってたわ」

イ「…なんで逃げ出したんです?」

マ「仲間内の博打でね、イカサマを覚えたのね。あの娘それが本場の賭場でも通用すると思って、バレて捕まっちゃったのよ」

イ「あー」

マ「あたしが50万ほど金を払って引き取ったのよ。それから仕事を仕込んで働かせたんだけど。それ以前はさんざんあの娘に甘くしてたからねー、プライドが許さなかったのか、裏切られた気になったのか。しばらくしたら出て行っちゃったよ」

イ「ハクメイの親ってどうしたんです?」

マ「さぁ?あたしは父親しか知らないけど、いつのまにかいなくなったね」

イ「…」

マ「ハクメイ、腕はいいでしょ?あたしが仕込んだからね」

イ「はい」

マ「人は変わるもんだよ。あたしがそれに関われなかったのは、少し残念だがね」

イ「…ちょっと俺、家に寄ってから行きます」

マ「あらそう?」

 

再び楠の家。

ミ「じゃあその時のお金を返せって言われたの?」

ハ「いや言われてない。言われてないけど返したいんだ」

ミ「?」

ハ「今は分かるんだ。マステラの態度が変わったのは、私に厳しくなったのは、博打で失敗したからじゃなくて、わたしがちゃんと生きていけるようにしたかったって。なのにわたしは、嫌われたと思って…」

ミ「出てっちゃったの?」

ハ「ああ…だからせめて、お金を返したい」

ミ「行くわよ」

ハ「へ?」

ミ「お金用意して」

ハ「あ、あぁ」

ミ「いくら足りないの?」

ハ「…10万ほど…」

ミ「十分あるわ。すぐ準備して」

 

ハクメイとミコチは岩貫会に向かった。中にはナライとマステライワシがいた。何かやりとりしていた。

ハ「マステラ

マ「ん?」

ハ「これは、あのときの金だ」

イ「あ…」

ハ「わたしは…わたしは、あのときのこと…」

マ「ん?」

ハ「ありがとうって言いたくて、その…」

マ「ふふふ…ハクメイ。せっかくだけと、この金は受け取れないよ」

ハ「え?そんな!」

マ「こっちのイワシちゃんのもね」

ハ「え?」

イ「う…」

マ「ない頭で、しっかり考えるんだね。なぜわたしがそれを受け取らないかを。つぎにあたしが来るときまでの宿題だよ」

 

マステラはナライとともに外にでた。二人で歩き出す。

ナ「あんなこと言ったら、言い出しにくいじゃねぇか」

マ「あんたがあの金をすっかり払ったってこと?」

ナ「ハクメイの給与から天引きしたんだ。払ったのはあいつだよ」

マ「あんたらしいわ。…しかしよくハクメイを使う気になったわね。悪い話だって聞いてたでしょ?」

ナ「まあな。だが仕事ぶりを見たら、噂とは別人でな。

マ「ふーん」

ナ「てっきり嫁をもらって落ち着いたのかと思ったんだ」

マ「嫁?」

ナ「いや、忘れてくれ」

マ「あんたのところで持て余してるなら、連れて行ってもいいのよ」

ナ「あんたも甘いな…」

マ「ああん?親が子供に甘くなくてどうするのさ」

ナ「違えねぇ」